メッシュ(人工補強材)とは ― 面で補強する
WHAT IS A HERNIA MESH
メッシュ(人工補強材)とは ― 「穴を縫う」のではなく「面で補強する」
鼠径ヘルニア(脱腸)の手術を調べていくと、ほとんどの説明に「メッシュ(人工補強材)」という言葉が出てきます。同時に、「人工物を体に入れて大丈夫なのか」「一生体に残るのは不安だ」「将来、何か影響が出ないか」といった漠然とした不安を持たれる方も少なくありません。
この記事は、特定の製品をおすすめしたり、メッシュの優劣を断定したりするものではありません。メッシュがどういう役割を果たすのか、なぜ再発予防に役立つと考えられているのかを、麻酔科専門医の視点から、できるだけ中立に整理しました。異物としての不安についても、一般的に知られている事実の範囲で、誠実にお答えします。
結論を先にお伝えすると、メッシュは「あいた穴を糸で縫い縮める」ためのものではなく、「弱くなった腹壁を面で広く覆い、支える」ための補強材です。この考え方が分かると、漠然とした不安は、ずいぶん整理しやすくなります。
Hole or Wall Weakness
そもそも鼠径ヘルニアは「穴」が問題なのですか?
結論:鼠径ヘルニアは、単なる「穴」ではなく、おなかの壁(腹壁)の一部が弱くなり、内側から押し出される状態と考えると分かりやすいです。
鼠径ヘルニア(脱腸)は、足の付け根あたりの腹壁が弱くなり、その弱い部分から腸などが皮膚の下へ飛び出してくる状態です。「穴があく」というと一点だけが破れたように感じられますが、実際には、その周囲を含めて壁の支えが弱くなっていることが多いとされています。
つまり、治療で考えたいのは「一点をふさぐ」ことだけではなく、「弱くなった範囲を、ふたたび押し出されないように支え直す」ことです。ここを理解しておくと、なぜ補強材(メッシュ)という発想が出てくるのかが、自然に見えてきます。鼠径ヘルニアという病気そのものについては、鼠径ヘルニア(脱腸)とは|原因・治療・手術でもご説明しています。
Sewing vs Reinforcing
「穴を縫う」のと「面で補強する」のは、何が違うのですか?
結論:弱った組織を糸で縫い縮める方法は、組織に張力(引っぱる力)がかかりやすく、メッシュは弱い範囲を面で広く覆うことで、その張力を分散して支えます。
弱くなった腹壁を、糸で引き寄せて縫い縮める考え方もあります。ただ、もともと弱った組織どうしを縫い合わせると、縫い目に力(張力)が集中しやすくなります。布が薄くなった部分を、そのまま糸で寄せて繕うところを想像すると、力のかかり方がイメージしやすいかもしれません。
一方、メッシュは、弱くなった部分とその周囲をまとめて、面で広く覆って支える発想です。一点に力を集めるのではなく、広い範囲に力を逃がすことで、再発(同じ場所からふたたび飛び出すこと)を防ぎやすいと考えられています。「穴をふさぐ」よりも「壁を裏打ちして補強する」というイメージが、実際に近いといえます。
- 縫い縮める考え方 ― 弱った組織どうしを引き寄せるため、縫い目に力が集中しやすい。
- 面で補強する考え方(メッシュ) ― 弱い範囲を広く覆い、力を分散して支えることで、再発を防ぎやすいとされる。
- 共通して大切なこと ― どの方法が適しているかは、ヘルニアの状態や全身の状態によって個別に検討されるべきもの。
Why Mesh Stays
メッシュは体内に残るのですか? 取り出さなくて大丈夫ですか?
結論:メッシュは、補強材として体内に留置されたまま使い続けることを前提とした材料で、後から取り出すことは通常想定していません。
メッシュは「一時的に当てて、あとで抜くもの」ではありません。弱くなった腹壁を支え続けるために、体内に留置したまま使い続けることを前提に設計されています。時間とともに、メッシュの網目に体の組織が入り込み、一体となって壁を支えるようになっていく、という考え方です。
「体に残る」と聞くと不安に感じられるかもしれませんが、これは“異物が放置される”という意味ではなく、“補強の一部として体になじみ、支え続ける”ことを意図したものです。骨折のときに体内に残すプレートやネジ、歯科のインプラントのように、目的をもって体内に留置される医療材料の一つ、と捉えると整理しやすいかもしれません。
Is the Material Safe
人工物を入れて、体に害はないのですか? 素材は安全なのですか?
結論:鼠径ヘルニアの補強に用いられるメッシュは、体内で長く使われることを前提に選ばれてきた材料ですが、医療である以上、合併症の可能性がまったくないとは言い切れません。
鼠径ヘルニアの手術で使われるメッシュは、体内で長く使われることを念頭に、材料としての適性が積み重ねられてきたものです。一般に、しなやかで腹壁になじみやすいことや、組織と一体化しやすいことなどが、材料を考えるうえでの要素とされています。
一方で、医療に「何も起こらない」と言い切れるものはありません。頻度は低くても、傷の違和感や、ごくまれに感染、引きつれ感などが生じる可能性は、メッシュを使うかどうかにかかわらず手術一般に伴います。大切なのは、こうした可能性を隠さずお伝えしたうえで、起きにくくする工夫と、起きたときの備えを整えておくことだと考えています。当院の安全管理の考え方は、鼠径ヘルニア日帰り手術の麻酔と安全管理でもご紹介しています。
なお、当院がどのメッシュを用いるかという具体的な製品については、ヘルニアの状態や全身の状態をふまえて個別に判断するため、ここでは特定の製品名を挙げていません。当院では、再発予防に適したメッシュを用いることを基本としつつ、お一人おひとりに合わせて検討します。
Mesh and Recurrence
メッシュを使うと、再発しにくくなるのですか?
結論:弱くなった範囲を面で広く支えることで、同じ場所からふたたび飛び出す「再発」を防ぎやすいと考えられており、これがメッシュを用いる大きな目的です。
再発とは、一度治療した場所から、ふたたびヘルニアが飛び出してくることを指します。弱った組織を縫い縮める方法では、縫い目に力が集中しやすく、その負担が再発の一因になり得ます。メッシュで面として支えると、力が分散され、再発を防ぎやすいと考えられています。
ただし、「メッシュを使えば再発しない」と言い切れるものではありません。再発の起こりやすさは、ヘルニアの状態、体の状態、術後の過ごし方など、さまざまな要因が関わります。だからこそ、どの方法・どの補強が適しているかは、画一的に決めず、お一人おひとりの状態に合わせて検討することが大切です。術式ごとの考え方の違いは、鼠径ヘルニアの術式の比較でも整理しています。
Our Approach
当院では、メッシュをどう考えて使っていますか?
結論:当院は腹腔鏡(TAPP法)を標準とし、弱くなった腹壁を面で補強して再発を防ぐ考え方のもと、再発予防に適したメッシュを用いています。
当院では、鼠径ヘルニアの日帰り手術を腹腔鏡(TAPP法)で行うことを標準としています。おなかの内側から弱くなった部分を確認し、そこを面で覆って補強する考え方で、メッシュは再発予防のための補強材として用います。具体的な製品は、状態に合わせて個別に検討します。
そして、メッシュや術式と同じくらい大切にしているのが、麻酔と全身管理です。麻酔科専門医である院長(岡村 正之)が、術前の全身評価から麻酔の設計、手術中の管理、目覚め、帰宅の判断までを一貫して設計・主導します。帰宅は経過時間ではなく数値化された基準で判断し、来院から帰宅まではおよそ4時間が目安です。手術や全身の状態から、日帰りでの全身麻酔が適さないと判断した場合に、無理に行わないことも、安全管理の一部と考えています。詳しくは鼠径ヘルニア日帰り手術の専門ページをご覧ください。
- 術式 ― 腹腔鏡(TAPP法)を標準とし、弱くなった腹壁を面で補強。
- メッシュ ― 再発予防に適したものを用い、製品は状態に応じて個別に検討。
- 麻酔・全身管理 ― 麻酔科専門医である院長が術前評価から帰宅判断まで一貫して設計・主導。
- 帰宅の判断 ― 経過時間ではなく数値化された基準で判断(来院から帰宅まで約4時間が目安)。
FAQ
よくいただくご質問
Q. メッシュは「穴をふさぐもの」という理解で合っていますか?
A. 「一点の穴を縫いふさぐもの」というより、「弱くなった腹壁を面で広く覆い、支え直す補強材」と捉えるのが実際に近いです。弱い範囲をまとめて支えることで、力を分散し、同じ場所からふたたび飛び出す再発を防ぎやすいと考えられています。
Q. メッシュが一生体に残るのは大丈夫なのでしょうか?
A. メッシュは、補強材として体内に留置したまま使い続けることを前提とした材料です。時間とともに体の組織がなじみ、壁を支え続けるという考え方で、後から取り出すことは通常想定していません。骨折のプレートや歯科のインプラントのように、目的をもって体内に置かれる医療材料の一つとお考えいただくと整理しやすいかもしれません。
Q. 人工物を入れることで、将来、体に害が出ませんか?
A. 鼠径ヘルニアの補強に用いられるメッシュは、体内で長く使われることを前提に選ばれてきた材料です。ただし医療に「何も起こらない」と言い切れるものはなく、頻度は低くても、違和感やごくまれな感染・引きつれ感などの可能性は手術一般に伴います。当院では、こうした可能性を隠さずお伝えしたうえで、起きにくくする工夫と起きたときの備えを整えています。
Q. 当院では、どのメッシュ(製品)を使っていますか?
A. 具体的な製品は、ヘルニアの状態や全身の状態をふまえて個別に判断するため、一律にはお示ししていません。当院では、再発予防に適したメッシュを用いることを基本としつつ、お一人おひとりに合わせて検討します。気になる点は、受診時に具体的にご説明します。
Q. メッシュを使えば、再発はしないのですか?
A. 面で広く支えることで再発を防ぎやすいと考えられていますが、「使えば再発しない」と言い切れるものではありません。再発の起こりやすさは、ヘルニアや体の状態、術後の過ごし方など複数の要因が関わります。どの方法・どの補強が適しているかは、お一人おひとりの状態に合わせて検討することが大切です。
Get in Touch
どこから相談すればよいですか?
結論:気になることがあれば、診断や費用の見通しの段階からご相談いただけます。
鼠径ヘルニア(脱腸)は、自然には治らない病気です。不安なまま様子を見ているあいだに症状が進むこともあります。少しでも気になることがあれば、受診や相談で確かめていくことをおすすめします。
新橋DAYクリニックは、JR新橋駅日比谷口から徒歩1分、東京メトロ銀座線新橋駅B出口すぐの場所にあります。完全予約制で、火曜・木曜・金曜・土曜に手術日を設け、水曜・金曜は20時まで診療しています。初診のオンライン診療にも対応しています。
- ご相談・ご予約 ― 0120-546-195
- 代表電話 ― 050-5527-1126
Related Articles
あわせて読みたい
この記事の制作者
岡村 正之
新橋DAYクリニック院長・麻酔科医師
日本専門医機構認定麻酔科専門医
黒崎 哲也
新橋DAYクリニック外科統括医師
日本外科学会認定外科専門医・指導医
日本内視鏡外科学会技術認定医
日本消化器外科学会専門医
日本消化器外科学会消化器がん外科治療認定医
日本大腸肛門病学会指導医・専門医
日本消化器病学会専門医
日本消化器内視鏡学会専門医
日本ロボット外科学会Da Vinci certificate
日本ロボット外科学会Robo-DocPilot国内B級
大城 崇司
新橋DAYクリニック外科医師
東京慈恵会医科大学 上部消化管外科 准教授
富山大学附属病院消化器・腫瘍・総合外科 客員教授兼任
日本外科学会認定外科専門医、指導医
日本消化器外科学会専門医、指導医
日本内視鏡外科学会技術認定医(消化器・一般外科)
消化器がん外科治療認定医
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
日本抗加齢学会専門医
Certificate of da Vinci console surgeon
日本肥満症治療学会評議員・データベース委員・教育委員・メンタルヘルス部会委員
日本内視鏡外科教育委員(減量・代謝改善手術担当)、縫合・結紮手技インストラクター
鈴木 淳一
新橋DAYクリニック外科医師
板橋中央総合病院外科診療部長
日本外科学会認定外科専門医
日本消化器外科学会専門医
消化器がん外科治療認定医
日本消化器病学会専門医
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
日本消化器内視鏡学会専門医
日本腹部救急医学会認定医
板橋中央総合病院外科診療部長
新居 高
新橋DAYクリニック外科医師
板橋中央総合病院外科医長
日本外科学会認定外科専門医
鈴木 淳平
新橋DAYクリニック外科医師
日本外科学会認定外科専門医
日本内視鏡外科学会技術認定医
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
日本消化器病学会専門医
日本消化管学会胃腸科専門医
日本腹部救急医学会認定医
板橋中央総合病院外科
監修:院長 岡村 正之(日本専門医機構認定 麻酔科専門医)|最終更新日:2026-06-25
鼠径ヘルニア・ブログ記事
鼠径ヘルニア日帰り手術
鼠径ヘルニア(脱腸)とは
鼠径ヘルニア・診察予約
鼠径ヘルニア・無料相談
ペインクリニック・一般診療
~鼠径ヘルニアにお悩みの方へ~
院長の岡村より患者さまへのご挨拶
For Patients From Outside Japan
よくある質問
メディア掲載実績
日帰り手術の口コミ紹介
鼠径ヘルニアセルフチェックシート
鼠径ヘルニア治療レポート
こちらの記事もご覧ください