鼠径ヘルニアの手術後、運動や性生活など質問しづらい悩みをまとめて回答します
記事最終更新日: 2025年2月6日
鼠径(そけい)ヘルニアの手術は、今日では多くの場合、日帰り治療できます。しかし、ご帰宅後の様子が気になる方も多いのではないでしょうか。仕事の復帰時期、食事、入浴、運動をいつから再開すればいいのか。新橋DAYクリニックでは、鼠径ヘルニアの手術をして「終わり」ではなく、患者さまが日常生活に戻れるまでをサポートいたします。夜の生活など、気軽には質問しづらい内容にも回答しますので、受診の前にお読みいただき、手術後に関する不安が少しでも取り除けたら幸いです。
鼠径ヘルニアの手術後、帰宅したら
鼠径ヘルニアの手術が終わると、約5~10分程度で目覚めます。全身麻酔から覚醒しても、伝達麻酔(神経ブロック)や鎮痛薬が効いているので、悶絶するような強い痛みを感じることはまずありません。手術後は約90分程度、個室にて休憩していただき、ご自分の足でご帰宅いただけます。ご帰宅前はお手洗いに行けることを確認し、飲水を行っていただき、医師の診察を受けて安全を確認後にご帰宅となります。術後数日分の内服薬の処方がありますので、お近くの薬局でお受け取り下さい。
当日、就寝まで
ご帰宅後は安静を保つ必要はありません。日常生活をお送りいただき、お食事も摂取内容に制限はありません。ただしアルコール摂取と患者さまご自身での自動車の運転はお控えください。入浴については、手術当日はシャワー浴のみで、浴槽につかるのは翌日から可能です。
手術時に使用した伝達麻酔(神経ブロック注射)の効果はご帰宅後半日程度持続します。クリニックで処方する鎮痛薬も必ず服用してください。痛みが強いときは頓服薬を飲む場合もあります。痛みは個人差がありますので、我慢して無理をせず、適宜服用してください。痛みの程度が気になるかと思います。感じ方には個人差が大きいので一概には言えませんが、「痛みで眠れなかった」という話はあまり聞きません。
痛みや症状についてご不安な点がありましたら、お気軽にご質問、ご相談ください。手術後は診療時間外でも医師にお電話がつながりますのでご安心ください。鎮痛薬の使い方もご説明します。
翌日の仕事や家事
翌日からお仕事に復帰可能です。普段通りの日常生活をお送りください。自動車の運転も可能です。ただし、身体に負担のかかる運動、腹部に力が入る動作(重いものを持つ、激しい長距離走などの運動、ウェイトリフティングなどの筋肉トレーニング、ゴルフ、サーフィン、乗馬、サイクリングなど)は鼠径ヘルニアの再発を予防するため、術後2週間はお控えください。お仕事で上記の動作が必要な方は特にご注意ください。業務上そのような動作を避ける必要がある場合、当院にて診断書を発行いたします。必要な方はお気軽にご連絡ください。
術後3日~1週間程度
術後2日目以降、浴槽に入る入浴も可能です。術後3日程度で痛みをほぼ感じなくなる方も多くいます。手術翌日に、傷口に貼られた透明なテープは患者様ご自身で剝がしてください。テープはガーゼと一体になっていて、一緒に剥がれます。透明なテープを剥がすと、中に肌色のテープが見えてきます。これは傷をくっつける役目をするテープになりますので、術後3-4日程度したら、ご自身で剝がしてください。ただし、それまでの間に自然に剥がれてしまったら、そのままにしておいて頂いて構いません。剥がした後の処置は必要ありませんが、テープの上からで構いませんので、毎日ご入浴中に傷口を洗ってください。
お渡しする鎮痛剤は5日分程度ありますので、必要でしたら鎮痛薬を服用してください。不快な痛みを和らげる事ができます。痛みの感じ方には個人差があり、痛くなければ服用しないで構いません。排便で力むとき、起き上がるとき、大きめの咳やくしゃみをするときなど、痛みが発生しやすいのでご注意ください。そうした動作による痛みがご不安な方は、あらかじめ動作の30分程度前に鎮痛薬を服用することで症状を緩和できます。喫煙は特に制限はありませんが、術後は咳や痰が増えることから痛みの原因になることがあります。
術後1週間程度で診察を行い経過をチェックいたします。患者様のご負担を減らすため、とくに目立った症状がなければオンライン診療をおすすめしておりますが、ご希望があれば来院されての診察ももちろん可能です。
鼠径ヘルニアの手術後の運動や性生活について
手術後2週間でお腹に力が入る運動や動作の制限も解除されます。
激しい運動は2週間程度控える
激しい運動やお腹に力を入れるお仕事や日常の動作、術後2週間は控えてください。
散歩、ウォーキングは問題ありませんが、ランニング、水泳などは「激しい運動」にあたります。ウェイトリフティングのほか、腕立て伏せや腹筋など自重を活用する運動も腹部に力が入るので、術後2週間はご遠慮ください。
2週間経過すれば、激しいスポーツも可能です。運動についてご不明な点はお気軽にお尋ねください。
性行為の再開時期と注意点
デリケートな性行為について、質問をいただくことが多くあります。
お腹に力が入る行為であること、性行為中に痛みがでる可能性があることから、術後2週間は性行為はお控えください。
また、「鼠径部ヘルニア診療ガイドライン 2015」によると、
鼠径ヘルニアの患者さまの2.4~23.2%に性行為中の鼠径部痛や射精障害等の性機能障害を認め、術後は頻度が1.0~6.0%に減少すると報告されていることから、鼠径ヘルニア手術は性行為中の鼠径部痛や射精障害等の性機能障害を改善させると結論づけられています。一方、手術前に性行為中疼痛がなかった2.3%で、術後の性行為における射精時に中等度から重度の疼痛が出たとの報告もあります。手術部位近くの微細な神経損傷による慢性疼痛や、繊維化による精管の巻き込みが原因と言われています。
メッシュを挿入する事による精巣機能・不妊への影響ついては、FSH、LH、血清テストステロン・レベルに影響を与える可能性はあるものの、精巣容積、血流についてはメッシュの使用による影響は少ないという結果がでています。メッシュの配置位置(前方、後方)も精巣血流には影響せず、精子形成機能に差は認められないことから、メッシュの使用による男性不妊の可能性については、両側手術の場合リスクがやや増加するものの、無関係であるとされています。
鼠径ヘルニア手術後のQ&A
その他、鼠径ヘルニアの手術を受けられた後、主に運動に関するご質問にお答えします。ここに記載のある内容以外でも、ご質問ございましたらお気軽にお尋ねください。予約時、診察時および手術を受けられたあとも、どうぞお気軽にご相談ください。
筋トレはOKですか?再発の予防にもなりますか?
お腹に力が入る筋トレメニューは術後2週間はお控えください。また筋トレに、鼠径ヘルニアを再発防止する効果はありません。お腹に力を入れるのは鼠径ヘルニアが悪化する原因になるので、日常生活では、重いものを持つ回数を減らす、立ちっぱなしの作業を少なくするなどが有効です。
お酒はどの程度我慢すればよいでしょうか?
手術当日のアルコールは控えてください。飲酒や入浴は血行をよくする作用があるので、痛みや内出血が起こりやすくなります。
入浴はできますか?
手術当日はシャワー浴となります。手術翌日から浴槽に入って入浴できます。
立ち仕事なのですが心配はありませんか?
手術後、立ち仕事について制限はありません。鼠径部に負担がかかるのではと心配されるかもしれませんが、日常生活をお送りください。
性生活など聞きづらい相談もいつでもどうぞ
性に関する悩み、質問は異性には聞きづらいかと思われます。当院には男性、女性スタッフともにおります。外科医、麻酔科医、看護師のいずれもが鼠径ヘルニアの症例を多く経験しておりますので、誰でも生活に関する質問にはお答えできます。
手術前後にご不安になるのは当然のことです。したがって「こんなことを質問するのは恥ずかしい」「呆れられるのではないか」などと遠慮される必要はございません。
どうぞお気軽に、なんでもご質問ください。
また、術前術後の過ごし方は、以下のページでも動画でご案内しております。併せてご覧ください。
手術・麻酔のご説明、術前術後の
過ごし方に関する動画はこちらから
記事執筆:
岡村正之(新橋DAYクリニック院長・麻酔科医師 日本専門医機構認定麻酔科専門医)
記事監修:
黒崎哲也(新橋DAYクリニック外科統括医師 日本外科学会認定外科専門医・指導医 日本内視鏡外科学会技術認定医 日本消化器外科学会専門医 日本消化器外科学会消化器がん外科治療認定医 日本大腸肛門病学会指導医・専門医 日本消化器病学会専門医 日本消化器内視鏡学会専門医 日本ロボット外科学会Da Vinci certificate 日本ロボット外科学会Robo-DocPilot国内B級)
大城崇司(新橋DAYクリニック外科医師 東京慈恵会医科大学・上部消化管外科・准教授 富山大学附属病院消化器・腫瘍・総合外科・客員教授兼任 日本外科学会認定外科専門医・指導医 日本消化器外科学会専門医・指導医 日本内視鏡外科学会技術認定医(消化器・一般外科)
消化器がん外科治療認定医 日本がん治療認定医機構がん治療認定医 日本抗加齢学会専門医
Certificate of da Vinci console surgeon 日本肥満症治療学会評議員・データベース委員・教育委員・メンタルヘルス部会委員 日本内視鏡外科教育委員(減量・代謝改善手術担当)、縫合・結紮手技インストラクター)
鈴木淳一(新橋DAYクリニック外科医師 日本外科学会認定外科専門医 日本消化器外科学会専門医 消化器がん外科治療認定医 日本消化器病学会専門医 日本がん治療認定医機構がん治療認定医 日本消化器内視鏡学会専門医 日本腹部救急医学会認定医 板橋中央総合病院外科診療部長)
新居高(新橋DAYクリニック外科医師 日本外科学会認定外科専門医 板橋中央総合病院外科医長)
鈴木淳平(新橋DAYクリニック外科医師 日本外科学会認定外科専門医 日本内視鏡外科学会技術認定医 日本がん治療認定医機構がん治療認定医 日本消化器病学会専門医 日本消化管学会胃腸科専門医 日本腹部救急医学会認定医 板橋中央総合病院外科)
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