鼠径ヘルニア(脱腸)の【腹腔鏡手術】と【鼠径部切開法】を比較|麻酔科医が提案する痛みの少ない方法とは?

鼠径ヘルニア(脱腸)の【腹腔鏡手術】と【鼠径部切開法】を比較|麻酔科医が提案する痛みの少ない方法とは?
鼠径ヘルニア手術・ブロック注射
2024年3月1日: 記事最終更新日

こんにちは、新橋DAYクリニック院長の岡村です。私は麻酔科医として、当院の鼠径ヘルニア日帰り手術の麻酔を担当しています。また、術後の痛みに対する処置を専門として行っております。

当院にお越しになる鼠径ヘルニアの患者さんは、メッシュを挿入する腹腔鏡手術を希望してご来院される方が多いですが、その理由をお尋ねしてみると、大体「終わった後の痛みが少なそうだから」とお答えされます。

たしかに、腹腔鏡手術は鼠径部切開法と較べると圧倒的に術後の痛みが小さくなります。家事やお仕事などの日常生活にすぐ復帰できる「日帰り手術」を検討されている方にとって、術後の痛みの程度は重要です。そこで今回は鼠径ヘルニア手術の術後の痛みについて、当院で行われている「腹腔鏡手術」と、従来法である「鼠径部切開法」とを比較しながら、痛みが少なくなる理由について解説します。

鼠径部切開法と腹腔鏡手術で感じる痛みの違い

鼠径(そけい)ヘルニアの手術には主に、

・腹腔鏡下手術
・鼠径部切開法

大きく分けて、腹腔鏡を使うかどうかでこの2つの手法に分類されます。ヘルニア(脱腸)を修復して、再発予防のためのメッシュを挿入し腹壁を補強するという手術内容は、どちらの術式も変わりません。

前提として、全身麻酔で眠っているため、手術中に痛みを感じることはありません。手術中は完全に無痛です。「気づいたら終わっている」といった表現の方が正しいかもしれません。

皆さんが気になるのは、手術後の痛みと「傷あとがどの程度残るか?」ではないでしょうか。術式を較べると、腹腔鏡手術のほうが手術後の痛みも少なく、残る傷あとも小さくなります。

傷口は腹腔鏡のほうが小さい

鼠径ヘルニア手術腹腔鏡手術の傷・各約5mm程度
鼠径ヘルニア手術・鼠径部切開法の傷

腹腔鏡手術では、5mm程度の穴を3か所、開けます。1か所が腹腔鏡(カメラ)を入れるため、その他2カ所は鉗子(かんし・手術器具)を入れるための穴です。補強と再発防止のためのメッシュも折りたたまれた状態でこの5mmの穴から挿入されます。この3か所の穴から手術器具を操作します。

一方、鼠径部切開法の傷口は、3cmから5cmくらいになります。傷の大きさは、鼠径部切開法の中の細かい術式の違いや、執刀する医師の技量や考え方(傷を小さくすることよりも、手術しやすいように切るほうが「安全だ」という考え)にもよります。また、見た目の傷が小さくても、内部の腹膜は表面以上に切る場合もあります。

実はこの腹膜を切る幅が長いと、術後の痛みも大きくなるのです。なぜならお腹の内部を取り囲むようにつながっている腹膜は、呼吸とともに伸展し動くためです。呼吸そのたびに傷口が引き伸ばされるので腹膜を切った幅が大きいほど、生じる痛みも大きくなります。

そのため、手術による身体へのダメージを減らす手術法(低侵襲と言います)が長年研究されてきましたが、その最たるものが傷口を小さくする手術法の開発でした。腹腔鏡手術もこうした研究による偉大な成果であり、1か所あたりの傷を小さくし、腸管が露出する時間を少なくすることにより術後の癒着など合併症を減らせるようになりました。今日では腹腔鏡が広く普及し、鼠径ヘルニア以外の外科手術で腹腔鏡が使用されています。

胃、大腸、胆のう、食道、虫垂炎などは腹腔鏡手術が第一選択となっています(ロボット手術も腹腔鏡手術の一種です)。近年では肝臓や膵臓手術でも腹腔鏡が用いられるようになってきました。

いずれの場合も、腹腔鏡のほうが開腹手術より傷口が小さくなります。鼠径ヘルニア手術の場合は、臓器の摘出がなく傷口も小さいため、手術当日からシャワー浴が可能です。翌日から湯船に入っても問題ありません。

術後の痛み対策:ブロック注射で長く鎮痛

鼠径ヘルニア手術・ブロック注射

鼠径部切開法の場合、必ずしも全身麻酔は必須ではありません。日帰りクリニックでは外科医が単独で局所麻酔のみで行う事もありますが、手術の安全管理の観点から、市中病院・総合病院では、麻酔科医が全身麻酔、もしくは背中に注射を行い下半身のみ痛みをとる脊椎麻酔を行うことが一般的です。術後の痛み対策としては、近年は全身麻酔にブロック注射を併用する事が増えてきています。それにより傷口が大きくてもある程度は鎮痛できます。

腹腔鏡手術の場合、全身麻酔が必須です。通常麻酔科医が全身麻酔を行い、術後の痛みを管理します。傷口が小さいので、全身麻酔のみで術後の痛み対策は鎮痛薬の内服で充分なことも多いのですが、当院では全身麻酔とブロック注射を併用し、より術後の痛みに配慮しています。ブロック注射は左右脇腹の2カ所に注射し、傷口と腹膜から脳に伝達される痛みの経路をブロックします。これにより術後の不快な痛みを軽減します。

当院のブロック注射で用いる局所麻酔薬「レボブピバカイン」は、個人差はあるものの、手術後平均9時間程度は持続します。ブロック注射は体内の小さなスペース(コンパートメント)に局所麻酔薬を留まらせることで、少量でも鎮痛効果が長く続きます。これで術後本来最も痛みが強い時間帯をブロック注射の効果で乗り切ることが可能です。

一方、局所麻酔で使用する局所麻酔薬(リドカイン)や脊椎麻酔に使用する局所麻酔薬(ブピバカイン)の持続時間はおよそ2-3時間程度です。これらは手術を行うためのものであり、術後鎮痛としての使用は考慮されていません。ブロック注射で用いるレボブピバカインを、ブロック注射や一部の麻酔方法(硬膜外麻酔)以外で用いることは、医療保険の請求上、許可されていません。

ブロック注射や局所麻酔が切れた後も痛みは残りますが、腹腔鏡手術の場合、当院でお渡しする鎮痛剤を服用していただけば、ほとんどの方が問題なく翌日以降も日常生活を送られています。鎮痛薬は毎食後に飲むものと、痛みが出た際に使用するものがあります。お薬を飲まず痛みを我慢する方もいらっしゃいますが、あまり意味がありません。術後の痛みは積極的に鎮痛した方が合併症の発生が下がるという報告も多くあり、痛みを我慢せず内服薬をしっかり服用することをおすすめしています。

適用可能ならば腹腔鏡手術がおすすめ

以上の解説で、術後の痛みの観点からも腹腔鏡手術に多くのメリットがあることがおわかり頂けたと思います。可能であるならばすべての患者さんに受けていただきたい手術法ですが、腹腔鏡手術を適用できない場合があります。

・以前に同側の鼠径ヘルニア手術を腹腔鏡にて行っている場合
・下腹部の開腹手術の既往(大腸手術や前立腺全摘出術などのお腹を大きく開ける手術)

主に開腹手術の既往がある場合、癒着の可能性があることから腹腔鏡手術は難しいことが予想されます。特に前立腺全摘手術を行った場合、鼠径ヘルニア手術で剥離する腹膜と、前立腺手術の際に剥離する腹膜が同じ部位であることから、再度剥離する際に困難や合併症の可能性があり、原則当院では日帰りでの腹腔鏡手術を実施しておりません。

以上の方々は安全面の観点から鼠径部切開法手術が推奨されますが、そうでない方は腹腔鏡手術が選択可能です。術後の経過予後や快適性を考慮すると腹腔鏡手術の方がおすすめです。また、「血液をサラサラにする薬を内服しているので鼠径部切開法しかできません」と他院で言われた患者さんのお話を聞きます。よく誤解されているケースが多いですが、「腹腔鏡手術だから危険性が高まる」わけではありません。多くは腹腔鏡手術が適用可能です。糖尿病や心筋梗塞、脳梗塞といった合併症をお持ちの方の場合でも同様です。手術によるリスクという意味では鼠径部切開法でも腹腔鏡でも変わりません。

日帰り手術が可能かどうかという観点では、最終的に医師の診察で総合的に判断していますが、もし糖尿病や高血圧、心疾患など持病をお持ちでも、かかりつけ医から処方された内服薬を定期的に内服し、状態がおちついている方であれば、多くは日帰りにて対応可能です。ご自身の持病の状態で日帰りが可能かどうかは、よろしければまずは一度ご相談下さい。また、こちらのページから日帰り手術が可能かどうか簡易チェックすることができます。ご受診前にぜひお気軽にご利用ください。

鼠径ヘルニアの手術は安心しておまかせください

鼠径ヘルニアの手術、当院では腹腔鏡による身体に負担の少ない手術を行っております。鼠径ヘルニアの日帰り手術は、手術時間は、通常、片側約30分、両側で約1時間程度です。腹腔鏡手術が普及した今日では、医師の技術修練も進み、鼠径部切開法と比較してもさほど手術時間に違いはありません。術後の痛みや安全性への取り組みでも多くのメリットがある手術法と言えます。

腹腔鏡手術の執刀症例数1000例以上の実績がある医師が執刀する当院なら、術後の痛みも少なく、総合病院で行っている腹腔鏡手術を、院長の岡村をはじめとした麻酔科医がブロック注射などを駆使して痛みを管理する事により、日帰りで行うことができます。ぜひお気軽にご相談ください。

新橋DAYクリニックなら鼠径ヘルニアは日帰りで治療可能です。翌日からお仕事に復帰できるので、遠方からも多くの患者さまがご来院します。

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