そけいヘルニア

鼠径ヘルニアの手術を解説。からだに負担が少なく安全な方法は?

記事更新日: 2022-06-18 00:05:12

新橋DAYクリニック院長の岡村です。
「鼠径ヘルニアの手術方法ってどんなものなの?」
「日帰り手術なら痛みや負担を少なくできるというが、なぜ?」
「傷の大きさはどの程度?」

患者さまから手術方法についてのご質問をよくいただきます。「鼠径ヘルニアの日帰り手術は安全」とは言うものの、どんな手術を行っているのか詳しく知る機会は少ないかもしれません。手術前の不安が少しでも解消されるように、修復術について解説します。

1. 鼠経ヘルニアの修復術

鼠径ヘルニアは自然治癒がなく、手術を行うことでしか根治しません。ヘルニアの状態を元に戻す「修復術」には主に次の2種類があります。

  • 腹腔鏡下ヘルニア修復術
  • 鼠径部切開法

現在ほとんどの場合に腹腔鏡手術が行われ、適用できない場合に鼠径部切開法が採用されます。

1.1 腹腔鏡を使った手術法が主流に

現在の主流の手術は、腹腔鏡を使ったものです。これは鼠径ヘルニアに限ったことではなく、腹部の手術全般に言える事です。ロボットを用いた手術法も登場していますが、これも広い意味では腹腔鏡手術と言えます。
手術法としては、おなかに数ミリ程度の小さな穴を3つ作り、カメラと鉗子を挿入します。おなかの内部映像をモニターで見ることにより、ヘルニアの穴を直接確認し、確定診断をします。腸が嵌まり込んでいれば修復し、ヘルニアを閉じて、腹膜と筋肉の間にメッシュ(補強材)を挿入し、組織に固定します。メリットは傷が小さく、手術後の痛みが小さい点です。からだへの負担が少ないので、ご帰宅後に行動制限はありません(重いものを持ったり、激しい運動は術後2週間不可となります)。お仕事や学業などには翌日から復帰できます。使用されるメッシュの機能が向上してきたので、体内で縮むことが少なく、再発の可能性も以前に比べ低下しています。

1.2 鼠径部切開法の特徴は

鼠径部切開法は、鼠径部付近を3~5センチ程度切開した上で、腸が筋膜の外に飛び出さないようにメッシュで補強する方法です。腹腔鏡手術が全身麻酔を必要とするのに対し、鼠径部切開法は必ずしも全身麻酔を必要とするわけではないので、全身状態が悪く全身麻酔を行うことが難しい方や、過去に大きな腹部の手術をしており、腸の癒着により腹腔鏡の使用が難しい場合などは鼠径部切開法が提案されます。傷が大きくなるため、手術後の痛みは大きくなる傾向があります。下着を着用していれば傷跡は見えなくなります。なお鼠径部切開法でも入院は必須ではなく、日帰り手術の対応も可能です。

2. 鼠径ヘルニアの腹腔鏡修復術のよい点

前項でも紹介した通り、腹腔鏡下修復術は鼠径部切開法に比べて傷が小さく、術後の痛みが少ないことから、患者さまにかかる体への負担を減らすことができます。
また、腹腔鏡手術は、鼠径ヘルニアに限らず多くの腹部手術で採用されています。近年では規模の大きな手術を多く執刀する外科医ほど、腹腔鏡手術の手技操作に慣れ親しんでいます。外科医にとって腹腔鏡手術を行う心理的ハードルも下がっており、多くの医師がこの術式を採用する事で、鼠径ヘルニア手術の技術発展につながり、ひいては患者さまに対する手術成績の向上と安全性の向上に寄与すると考えられます。

2.1 痛みを感じるのは腹膜が切れるから

傷の痛みの原因は、主に腹膜が切れることによります。呼吸にあわせ腹膜が横隔膜の動きで引っ張られる際に痛みが出ますが、切った部分が長いと引っ張られる距離も大きくなるため、痛みが強く出ます。一般的に5mmの傷を複数作るより、1カ所でも3cmの傷があれば痛みが大きくなると言われています。

2.2 数ミリの傷でからだをできるだけ傷つけない

腹腔鏡手術では、挿入の際に腹部に小さな穴を3カ所作ります。いずれの傷も大きさは数ミリ程度です。この穴からカメラや鉗子、メッシュを挿入し、ヘルニアの修復術を行います。手術法、手術機材、使用されるメッシュなど、以前に比べ操作性が改良されていますので、手術時間も短時間化が進んでいます。当然のことですが、手術の傷が小さければ小さいほど、日常生活に復帰するまでの時間も短くなります。

鉗子・カメラが入った図
鉗子・カメラが入った図

2.3 毛を剃るなどの準備は不要

手術で傷ができる場所は臍と、臍の左右の脇です。だから手術前に陰毛を剃る必要も一切ありません。全身麻酔を使って患者さんが動かないような対策はしますが、胃の管や尿の管も使用しません。手術にかかる時間は患者さまの状況にもよりますが、概ね1時間ほどです。その後の回復時間を含めて、ご来院から帰院まで4時間程度となります。

2.4 麻酔を適切に調整

腹腔鏡を使った手術の場合、全身麻酔が必要です。手術中はお腹を炭酸ガスで膨らませるため、患者さまご自身の呼吸を止めて、人工呼吸をする必要があるためです。局所麻酔に比べると、全身麻酔では使用する薬品の種類と使用量が増え、手術後も麻酔薬が体内に残存すると考えられてきました。ところが現在は、薬品と、それを扱う麻酔科医の治療技術が進歩し、体に蓄積しにくい薬剤や、麻酔深度の調節性のよい麻酔薬が登場したりするなど、患者さまを安全に覚醒させることができるようになりました。実はこれも手術終了後にわずかな時間でご帰宅いただける大きな要因となっています。

3. 手術後の痛み

手術終了後に感じる痛みには個人差があります。一般的に腹腔鏡での鼠径ヘルニア手術による術後の痛みは軽く、痛み止めを飲めば十分という患者さんが多く、また抜糸も必要ないので、すぐに日常生活に復帰されるケースがほとんどです。長くても1週間程度もあれば痛みを感じなくなるケースが多くなっています。まれに1カ月以上、慢性的な疼痛が続く場合もあります。

3.1 新橋DAYクリニックの対応

当院では日帰りされた患者さんに、お電話で状態確認を行っています。痛みに備えて、内服薬を処方しますのでご安心ください。術後は経過観察のため、術後2~3週間で術後診察を行います。オンライン診療にて診察可能ですので、ご来院頂く必要はありません(ご来院にて対面診療を行うことももちろん可能です)。万全のアフターフォローも含め、安心安全な医療を提供しております。

4. 早めの検査と治療、新橋DAYクリニックにご相談ください

当院では、患者さんの負担をできるだけ減らして、日帰りでも根治できる手術方法を実施しています。診察時にもできるだけご不安を取り除くために、丁寧な説明を心がけております。電話やメール、来院時になんでもお気軽にご相談ください。

執筆:岡村正之(新橋DAYクリニック院長・麻酔開始 日本専門医機構認定麻酔科専門医)
記事監修:黒崎哲也(新橋DAYクリニック外科医師 日本外科学会認定外科専門医・指導医 日本内視鏡外科学会技術認定医 板橋中央総合病院・腹腔鏡手術センター センター長)
鈴木淳一(新橋DAYクリニック外科医師 板橋中央総合病院外科)
新居高(新橋DAYクリニック外科医師 板橋中央総合病院外科)
鈴木淳平(新橋DAYクリニック外科医師 板橋中央総合病院外科)

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