鼠径ヘルニアの腹腔鏡手術は傷も痛みも小さくできます。適切な麻酔でさらに痛みを低減します。
記事最終更新日: 2024年4月8日
こんにちは、新橋DAYクリニック院長の岡村です。
患者さんから聞かれる質問で一番多いのは「本当に痛みが少ないの?なぜなの?」という痛みに関する内容です。鼠径ヘルニアは良性の疾患ですが、手術でなければ治せません。逆に言えば手術さえ受ければ回復できます。
だから手術がうまくいくかより、手術前後の痛みが気になるのでしょう。当院では患者さんおひとりずつに寄り添う医療を提供しています。少しでも痛みを和らげられないか、日々よりよい方法を追求しております。
当院の「痛み」に関する方針
新橋DAYクリニックは患者さんの安全を確保しながら、「痛み」を和らげることにこだわっています。院長である私は麻酔科医です。皆さんは手術と聞くと執刀する外科医に注目しがちかもしれません。しかし手術中、患者さんの体調管理を行っているのは麻酔科医です。麻酔科医は、どんな種類の手術においても、患者さんの術後の痛みを和らげる方法を考えて麻酔を行います。痛みの感じ方には個人差がありますし、手術で小さいながら体に傷をつけるのは確かなので、痛みを全く感じなくなることは残念ながらありません。また全く痛みを感じないのは生体反応上危険でもあるので、患者さんが気にならない程度の痛みに抑えられるよう、様々な方法で麻酔管理を行います。ご自宅に戻られた後もスムーズに日常生活に復帰いただけるよう、術後の内服薬も様々なものを組み合わせて処方いたしますので、痛みや不快感から早く解放されるように最大限ご支援します。
腹腔鏡手術と切開手術の比較
当院では、鼠径ヘルニアの手術法に腹腔鏡を使用します。もう一つの代表的な方法である鼠径部を切開する手術と、傷や痛み、手術後の暮らしについて比較してみましょう。
傷が小さいので痛みも少ない
人間がおなかの傷を「痛い」と感じる主な原因は、中にある腹膜が切られているためです。呼吸するときに腹膜が引っ張られると痛みが出る仕組みで、切開した部分が長い方が痛みは強くなります。
腹腔鏡手術 | 切開手術 | |
傷の大きさ | 5mm程度の傷が3カ所 | 5cm程度の傷 |
痛み | 傷が小さく比較的痛みも少ない | 傷が大きい分、痛みも感じやすい |
回復までの期間 | 回復が早いので来院から4時間程度で帰宅可能 | 2~3日の入院が必要な場合が多い |
5mmの傷が複数ある場合よりも、3cmの傷1カ所のほうが痛みは大きいと言われます。
回復も早い
切開手術では、2~3日程度の入院が必要なケースも少なくなりません。それに対して腹腔鏡手術は日帰りが可能です。それだけ体調の回復が早いと言えます。さらに当院では腹腔鏡に用いるカメラも、より径の細い機器を求めました。小さいカメラのほうが傷口がさらに小さくて済むため、手術を受ける患者さんのからだにご負担が少ないと考えたからです。当院で手術した方は、翌日から仕事に復帰いただける場合も多く、手術当日から日常生活動作やシャワー入浴も可能です。
麻酔による痛みコントロール
傷の大きさに加えてもう一つ、痛みをおさえるのに欠かせないのは麻酔です。
当院では
- 全身麻酔
- 伝達麻酔(神経ブロック注射)
を併用して、患者さんが痛みを感じにくく、麻酔薬が体に蓄積しにくいように配慮しています。
全身麻酔ー麻酔の最適な量を調節
全身麻酔を適切に行うと、手術終了時間を見越して麻酔から覚める繊細な管理が可能です。もし腰椎に麻酔を投与すると、下半身に麻痺が残るため術後に歩くこともままなりません。排尿のため尿道にカテーテルを入れる処置を行う場合もあります。ただ、あまり早く麻酔が切れると手術後に痛みを感じるため、伝達麻酔を併用します。
伝達麻酔ー覚醒後の痛みも緩和します
全身麻酔で眠っている間に腹部に伝達麻酔(神経ブロック注射)を行うことで、術後の不快な痛みを和らげています。全身麻酔は手術終了後まもなく効き目が切れるので、その際の痛みを抑えることが重要です。伝達麻酔の効果は半日程度続きます。そのため、一般的に痛みのピークは当日から翌日までと言われるため、術後の痛みを軽減できます。
腹腔鏡手術の痛みに関するQ&A
腹腔鏡手術に対する漠然とした不安がある方もいらっしゃるかもしれません。代表的な質問とそれに対する回答を掲載します。
手術後、日帰りしても本当に大丈夫ですか
傷が小さい腹腔鏡手術と適切な麻酔技術があれば、十分日帰りいただけます。またお帰りの際に5日間分の鎮痛剤もお渡ししています。手術後数日は痛み止めを定時で内服することで、不快な痛みを和らげられます。痛みが強くなってきた際には頓服薬を使用していただきます。ただし、頓服薬はほとんどの方が多くても数回の服用で済みますので、どうぞご安心ください。
麻酔が切れた後に痛みを感じるのが不安です
伝達麻酔の効き目はおおよそ半日程度、続きます。ご帰宅された後、手術の当日夜には当院スタッフが状況確認のお電話を差し上げますので、痛みについてご不安な点があればぜひご相談ください。適切な鎮痛薬の使用についてなど、ご説明します。また、会話によって不安が和らぐことも多くあるのでなんでもご質問ください。
手術後の傷は残りますか、消毒など必要ですか
傷あとは5mm程度と小さく、抜糸も必要ありません。手術後、傷口は透明な医療用ボンドで覆われています。このボンドが「かさぶた」のような働きをしますので、傷口はそのままで消毒などの処置は不要です。約1週間程度すると自然に剥がれ落ちてきますので、そのままお過ごしください。もしご不安なら当院にお越しいただき、医師が処置をすることも可能です。また時間経過とともに傷あとは目立ちにくくなることが多く、1年もすれば自分でもよく見ないとわからなくなったなどの報告もあります。
腹腔鏡と麻酔で痛みを極力軽減します
麻酔科医は痛みをコントロールすると同時に、安全管理の専門家でもあります。からだへの負担が少ない腹腔鏡と麻酔を使いながらも、患者さんの体調をリアルタイムで確認し続けますのでどうぞご安心ください。手術後の痛みについても、最善の方法でさらに軽減できるようサポートいたします。
執筆:岡村正之(新橋DAYクリニック院長・麻酔科医師 日本専門医機構認定麻酔科専門医)
記事監修:黒崎哲也(新橋DAYクリニック外科統括医師 日本外科学会認定外科専門医・指導医 日本内視鏡外科学会技術認定医 日本消化器外科学会専門医 日本消化器外科学会消化器がん外科治療認定医 日本大腸肛門病学会指導医・専門医 日本消化器病学会専門医 日本消化器内視鏡学会専門医 日本ロボット外科学会Da Vinci certificate 日本ロボット外科学会Robo-DocPilot国内B級)
鈴木淳一(新橋DAYクリニック外科医師 日本外科学会認定外科専門医 日本消化器外科学会専門医 消化器がん外科治療認定医 日本消化器病学会専門医 日本がん治療認定医機構がん治療認定医 日本消化器内視鏡学会専門医 日本腹部救急医学会認定医 板橋中央総合病院外科診療部長)
新居高(新橋DAYクリニック外科医師 日本外科学会認定外科専門医 板橋中央総合病院外科医長)
鈴木淳平(新橋DAYクリニック外科医師 日本外科学会認定外科専門医 日本内視鏡外科学会技術認定医 日本がん治療認定医機構がん治療認定医 日本消化器病学会専門医 日本消化管学会胃腸科専門医 日本腹部救急医学会認定医 板橋中央総合病院外科)
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